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【社会保険】第3号問題について考える

最近ツイッターを見ていると、「自分で社会保険料を納めていないにも関わらず、年金をもらえる第3号被保険者を廃止すべき!」とか、「第3号の制度が女性の年収増を妨げている」というようなコメントを見かけます。

現役世代の負担が増す一方なので、負担してないやつがもらうなんてけしからん!と思うのは当然かもしれません。

私も現在は扶養内で働いていて、第3号として生きてる訳ですが、この制度は近いうちに見直される可能性が高いと思っています。

今回は少し引いて、フェアな目線でこの制度の是非を考えてみたい。

第3号被保険者とは

日本国内に居住している20歳以上60歳未満の方は、国民年金の被保険者となり、以下の3種類に分類されます。*1

  • 第1号被保険者・・・自営業者、学生など
  • 第2号被保険者・・・民間会社員、公務員など
  • 第3号被保険者・・・第2号被保険者に扶養されている配偶者

国民年金の保険料は毎年見直しがされますが、令和4年度については月額16,590円となっています。

第1号被保険者はこれを毎月支払うことになります。

第2号被保険者は厚生年金保険料を給料に応じて負担し、その中に国民年金分も含まれています。

ちなみに厚生年金の金額は、月額報酬や賞与に18.3%を掛けた額です。

厚生年金は加入者と会社が半分ずつ負担する『労使折半』となっています。

たとえば標準報酬月額が30万円だとすると、その18.3%は54,900円ですが、本人の月給から天引きされるのは半分の27,450円、会社がもう半分の27,450円を負担し、合計額を国に納めます。*2

一方で、第3号被保険者は保険料負担がゼロです。

自分で納めていなくても、第3号となっていた期間については100%支払ったものとして年金額を計算されます。

第3号になるには第2号の扶養に入る必要があります。

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育休中は社会保険料免除

実はあまり知られていないものですが、第2号被保険者が育休を取っている間、社会保険の加入は継続しますが保険料は加入者・会社ともに免除されます。

将来の年金は、支払はしていないけど納めたものとして計算されます。

ちなみに社会保険料免除については、事業者が日本年金機構に申出を行う必要があります。*3

育休中は一時的に収入が下がることで、収入次第では扶養に入ることも可能ですが、社会保険上は第2号のまま負担ゼロになるので、扶養に入る(第3号になる)メリットはありません。

ただし、収入次第で税制上の扶養に入れる可能性はあるので、「配偶者控除」や「配偶者特別控除」の条件を満たした場合、かなり節税になるのでこちらは検討する価値があります。*4

このあたりの話は誰も教えてくれないので、産休・育休を取る人が必要に駆られて調べてみて、初めて知る場合がほとんどだと思われます。

第3号が誕生した経緯

第3号被保険者制度が創設されたのは1985年。

制度創設前も、専業主婦は国民年金へ加入できたが、任意だったため、加入しているか否かで老後の年金額に格差が生じていた。また、任意加入していない場合は、障害年金を受給できず、離婚した時に年金がないという問題もあった。夫が働き、妻が家庭を守るという考え方が一般的であった時代に、稼得所得を得られない専業主婦の年金権の確保が、制度創設の目的であった。*5

つまり、専業主婦の老後を保証するための救済制度として誕生したわけです。

しかし社会状況の変化により女性も働くようになってきて、第3号加入者は年々減少しています。

ちなみに、令和2年度時点の第3号被保険者数は793万人、そのうち98%が女性でした。

公的年金の被保険者全体の人口は令和2年度末で6,756万人でしたので、被保険者の12%が第3号となっています。

支払ってないのにもらえるんかい論

確かに、自分で負担していないのに将来の年金計算時には支払ったテイで計算されるって、ず~っと途切れず払い続けている人からしたら、不公平感があるのは当然です。

でも、国はそれを認めていると。

育休中の免除に関しては、「子供を育てる」という大義名分がありますが、子育て中のために第3号になっている人もいますしね。

今の私のように子供はいないけど第3号の人もいる。

個々の家庭の事情をすべて見ていくことはできませんが、おそらく多くの女性が、人生のどこかの段階でこの制度の恩恵を受けてきたのは事実でしょう。

結婚が当たり前で、働く夫と専業主婦がスタンダードだった時代は、不公平感が表面化しなかったけれど、独身者・共働きが増えたことで、この制度の恩恵を受けない世帯の不満が顕在化してきたと言えます。

第3号が女性の年収増を妨げる⁉

この制度が始まったころは「女は家事して家計の足し程度にパートすればよい」というような価値観でしたが、今は「妻も働かないとキツイ」状況で、今後も女性の社会進出は不可避な流れになっています。

その流れの中で、古い価値観に基づいたこの制度が、女性の社会進出の足を引っ張っているという意見があります。

この主張に一定の説得力があるのは、いわゆる「年収の壁」により、130万超えないように調整している人が多いためです。

難しいのは、「女性は社会進出すべき」「社会的地位のある職や管理職にもっと女性を送り込みたい」と考えている層と、「扶養されながら生きていたい」層があって、女性の中でもそのへんの分断が起きている点です。

つまり、第3号が社会進出の邪魔になっていると思っている人と、第3号を廃止してほしくない人たちがいるということですね。

見直しの可能性

現実的には、第3号の廃止ではなく、扶養を抜けた際の『働き損』をなくすように制度改正がなされると考えています。

第3号による社会保険上の扶養や、配偶者控除などの税制上の扶養は、結婚の経済的メリットでもありました。

国が家族であることを優遇していたとも言えます。

これを真っ向から否定するような流れが、いきなり起こるとは考えにくいのです。

もともと専業主婦の救済措置として誕生したわけですし、家庭の事情で働けない人を切り捨てるようなことはできないというか、第3号廃止をマニフェストに掲げたところで選挙には勝てないかもしれません。

問題は女性が扶養内に収めるために、労働時間を調整していることの方でしょう。

これについては先日の衆議院本会議で、国民民主党も岸田総理に問いかけていました。

パート、アルバイトの皆さんからよく聞く声は、いわゆる「年収の壁」です。働く時間を調整しないと、社会保険料所得税を徴収される年収103万円、106万円、130万円などの壁に達して、世帯全体の所得が減少する逆転現象が起きてしまう問題です。昨年、今年と最低賃金が上がっていることはいいことですが、そのことで「年収の壁」に早く達してしまいます。店長さんや経営者の方も、年末にかけて忙しい時期に人手の確保ができなくなって困っています。当面は、最低賃金のアップに連動して「年収の壁」の上限を引き上げる見直しをした上で、抜本的な制度改正が必要だと考えますが、総理の考えを伺います。*6

これに対して岸田総理も「働き方に中立な制度の構築を進める」的なことを言っていました。

なので、個人的な予想でしかありませんが、数年以内に制度の見直しが行われるのではないかと思っています。

実際、扶養の条件が段階的に見直されて、社会保険に加入する女性を増やそうとしていますし、抜本的な制度改正が行われるのも時間の問題ではないでしょうか。

もしも第3号を完全に廃止するとなると、男女が同じように働くので、男性が今以上に家事・育児・介護をしないと家庭が崩壊します。

ワークライフバランスを考えると週40時間労働そのものが無理があって、1日6時間とか、週3日とか、労働時間を短くすることをセットで行わないといけません。

オランダのような労働スタイルですね。*7

日本がそうなっていくにはたぶんあと30年くらいかかると思います。